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国内希少野生動植物種・シマクイナの国内繁殖を初確認 ~巣の発見は約 110 年ぶり,巣立ち雛の撮影は世界初~ https://soubeokuse.wixsite.com/website/post

ポイント

・北海道勇払原野と青森県仏沼で国内希少野生動植物種・シマクイナの繁殖を日本で初めて確認。 ・巣の発見は世界でも約 110 年ぶり,巣立ち雛の撮影は世界初。

・従来の知見を覆し,北日本では本種が定期的に繁殖していることを示す重要な成果。 概要 北海道大学大学院地球環境科学研究院の先崎理之助教と同大学院農学院の北沢宗大氏,釧路市立博 物館の貞國利夫氏,NPO 法人おおせっからんどの高橋雅雄氏の研究グループは,国内希少野生動植 物種に指定されているシマクイナの繁殖を北海道勇払原野と青森県仏沼で初めて確認しました。 シマクイナは極東に分布する世界最小のクイナ科鳥類です。その生態は謎に包まれていますが,生 息数が少なく減少していると思われることから,国内希少野生動植物種に指定されています。しかし, 近年,北日本の複数の湿地では夏季に数羽から数十羽のシマクイナが相次いで確認されており,繁殖 が疑われていました。 そこで研究グループは,2012 年以降に本種が毎年確認されている北海道勇払原野の湿地でシマク イナの繁殖状況を調べました。2018 年 5~9 月に,湿地内の本種の縄張り付近に自動センサーカメラ を仕掛け,湿地内の固定ルートを歩いて繁殖の決め手となる本種の子連れの発見を試みました。 その結果,自動センサーカメラではシマクイナの子連れを撮影することは出来なかったものの,目 視調査では本種の一組の子連れ(成鳥 1 羽と巣立ち雛 6 羽)の観察・撮影に世界で初めて成功し,約 110 年ぶりに本種の巣を発見しました。さらに,2004 年に青森県仏沼で保護・撮影され,種不明とさ れていたクイナ科鳥類の巣立ち雛が,研究グループの検証によりシマクイナであることが判明しまし た。これらは日本におけるシマクイナの初めての繁殖記録であり,本種の生態の理解と保全に貢献す る重要な成果です。 本研究成果は,2021 年 4 月 28 日(水)公開の Wilson Journal of Ornithology 誌にオンライン掲載 されました。 シマクイナの巣立ち雛(別の年に許可を得て捕獲・撮影したもの) 2 / 4 【背景】 シマクイナは極東に分布する全長 13 ㎝程の世界最小のクイナ科鳥類です。本種は最も生態が謎に包 まれた鳥類の一つであり,2016 年に沿海地方の広大な湿地帯で卵殻の発見により 1906 年以来の繁殖が 確認されるまでは,詳しい繁殖地さえわかっていませんでした。巣も 1906 年以降は見つかっておらず, 巣立ち雛に至ってはこれまで世界の誰の目にも触れたことがありませんでした。北日本を含む日本列島 は,長らく本種の越冬地とされ,その生息数は極めて少ないと考えられてきました。 こうしたことから,本種は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは危急種(VU),環境省レッ ドリストでは絶滅危惧 IB 類(EN)に選定されており,国内希少野生動植物種にも指定されています。 しかし,約 15 年前より北日本の複数の湿地では,夏季に数羽から数十羽のシマクイナが毎年のよう に確認されており,これらの地域では本種が繁殖しているのではないかと疑われていました。 【研究手法】 研究グループは,2012 年以降に本種が毎年確認されている北海道勇払原野の湿地においてシマクイ ナが繁殖しているかどうかを調べました。2018 年 5~9 月に湿地の合計 6 羽のシマクイナのテリトリー 付近に自動センサーカメラを仕掛け,繁殖の決め手となる本種の子連れ(成鳥と巣立ち雛)の撮影に努 めました。さらに,シマクイナは主に夜間に囀ることから,湿地内の決められたルートを夜間に歩いて シマクイナの子連れを探しました。この調査は約 1~2 週間おきに行い,発見率を上げるために 100~ 200m おきに本種の鳴き声を拡声器から再生し,反応を確かめる手法も併用しました。 【研究成果】 自動センサーカメラでは,4 つのテリトリーでシマクイナの成鳥(図 1)を撮影することができまし たが,子連れは撮影できませんでした。一方,夜間調査では,2018 年 8 月 12 日に一組の子連れ(成鳥 1 羽と巣立ち雛 3 羽)を確認し,8 月 18 日にも同じ子連れ(成鳥 1 羽と巣立ち雛 6 羽)を確認できまし た。この時には巣立ち雛の撮影にも成功しました。観察・撮影された巣立ち雛は,全身が黒い幼綿羽*1 に覆われており,全長約 5cm だったことから,生後 1 週間程度と推定されました(図 2)。また,嘴は 細短くピンク色みを帯びた白色であること,脚が細く灰色であること,耳付近に淡色斑があること,「チ ヨ」という特徴的な鳴き声から,同所的に生息し混同の恐れのあるクイナとヒメクイナの巣立ち雛と区 別できることが明らかになりました。8 月 26 日にはこの子連れが最初に発見された地点の地上からイ ネ科草本で作られた古巣が見つかりました。 さらに,2004 年に青森県仏沼で保護・撮影され,種不明とされていたクイナ科鳥類の巣立ち雛が,上 記で明らかになったシマクイナの巣立ち雛の特徴を持つことが研究グループの検証により判明しまし た。このことは仏沼でシマクイナが繁殖していたことを意味します。これらは日本におけるシマクイナ の初めての繁殖記録です。また,本種の巣は約 110 年ぶり,巣立ち雛は世界で初めての発見です。北海 道や青森県では、これまでシマクイナの冬期の記録は知られていません。 以上より,北日本ではシマクイナは冬鳥*2ではなく,定期的に繁殖する夏鳥*3であることが明らかに なりました。 3 / 4 【今後への期待】 日本で記録のある野生鳥類約 630 種類のうち,約 240 種が毎年繁殖しています。鳥類は人目につきや すく,また昆虫や植物に比べて種類が少ないことから,国内繁殖種はほとんど発見済みであると思われ ていました。そのため,今回北日本の複数地域でシマクイナの繁殖が確認されたことは驚くべきことで す。生息地の湿地から出ることがなく,主に夜間に囀ることからこれまで見過ごされてきたのかもしれ ません。本研究成果により,晴れて本種は国内繁殖種に加わることになります。 一方で,本種の生息地である湿地は国内外で急速に減少しています。本種の保全には,現在の繁殖地 を確実に把握し保全していくこと,本種が繁殖できる湿地を徐々にでも復元していくことが求められま す。そのために,本研究グループは現在本種が北日本のどこで,どのくらい繁殖しているのかを調べて います。また,従来の知見とは異なり,本種は北日本では夏のみに生息しており,冬はどこかに渡って いっていることが示唆されました。 渡り鳥の保全の成功には,繁殖地・中継地・越冬地が一帯となった取り組みが必要とされます。今後 は本種の中継地や越冬地を明らかにすることが求められます。 論文情報 論文名 Breeding evidence of the vulnerable Swinhoe’s Rail (Coturnicops exquisitus)(日本におけ るシマクイナの繁殖記録) 著者名 先崎理之 1,北沢宗大 2,貞國利夫 3,高橋雅雄 4,5(1北海道大学大学院地球環境科学研究院, 2北海道大学大学院農学院,3釧路市立博物館,4弘前大学農学生命科学部,5NPO 法人おおせ っからんど) 雑誌名 Wilson Journal of Ornithology(鳥類学の専門誌) DOI 10.1676/19-45 公表日 2021 年 4 月 28 日(水)(オンライン公開) お問い合わせ先 北海道大学大学院地球環境科学研究院 助教 先崎理之(せんざきまさゆき) TEL 011-706-2280 FAX 011-706-2280 メール msenzaki@ees.hokudai.ac.jp URL https://masayukisenzaki.wixsite.com/senzaki 配信元 北海道大学総務企画部広報課(〒060-0808 札幌市北区北 8 条西 5 丁目) TEL 011-706-2610 FAX 011-706-2092 メール jp-press@general.hokudai.ac.jp

 
 
 

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